国際日本文化研究センター所蔵の古医学書について

Old Medical Books in the Library of the International Research Center for Japanese Studies

国際日本文化研究センターは「宗田文庫」および「野間文庫」という二つの古医学書コレクションを所蔵している。

「宗田文庫」は日本医薬を中心とした故宗田一氏の旧蔵書から成るコレクションである。宗田氏は日本医史学会常任理事として活躍し、日本の医療文化史の権威として知られている。また、国際日本文化研究センターではその設立当初から共同研究員として研究活動を行い、氏の遺志により、その蔵書が同センターに寄贈され、広く公開・利用されるようになった。

「宗田文庫」は漢方・洋学などの和医学刊本や写本が中心であるが、その他にも、

引札・商品広告・錦絵・書画・番付のような一枚刷や雑誌類や文書など、日本医療文化史に関する幅広い種類の資料が豊富にある。

「野間文庫」は野間科学医学研究資料館旧蔵の西洋医学古典コレクションである。同資料館は、科学史、とりわけ医学史研究の振興を理念に設立された。ビタミンEの発見者として知られ、生前、医学古典の収集に努めたハーバード・マクレイン・エヴァンス(Herbert McLean Evans)の旧蔵書を購入したことを機会に、西洋医学古典の一大コレクションを築き上げ、広く医学史研究者の用に供せられた。野間科学医学研究資料館の閉館後にも、コレクションが研究者に活用されるように国際日本文化研究センターに寄贈された。

「野間文庫」の最大の特徴は、十六世紀から十八世紀にかけての代表的な解剖・生理学書を網羅し、西洋医学史の宝庫となっていることである。また、蘭学が勃興してから、日本の医学は西洋医学からの影響を大いに受けたため、この「野間文庫」は西洋医学の研究ばかりでなく、「宗田文庫」における蘭学資料の研究の際、その典拠を同定するためにも極めて有用である。

国際日本文化研究センターでは、両文庫をさらに充実させるための購入も定期的に行っている。その場合、特に蘭学を視野に入れている。最近、新しく購入した古医学書には、『医範提綱内象銅版図』江戸、文化5年(1808)やクルムス『解剖図表』Johan Adam Kulmus, Ontleedkundige tafelen. Amsterdam, 1734.およびブランカールト『新訂解剖学』Steven Blankaart, De nieuw hervormde anatomie. Amsterdam, 1696がある

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